「あるふぁぶっく」の店名について
「あるふぁぶっく」とは、何か?
これは、2019年初頭より運営者(キタモトツヨシ)が茨城県高萩市に事務所を置き、主にインターネット販売を中心に、週末は軽ワゴンによる移動販売も行いながら、時には出張買取も行う古書店業の名称である。
運営者(キタモトツヨシ)は、農業、及び運送業などと兼業で古書店業を営むという三足のわらじを履こうという半ば無謀ともいえる計画である。
もともと、運営者(キタモトツヨシ)は、2016年8月より高萩市地域おこし協力隊として、高萩市が地域おこしのためのブランド化に取り組んでいる「花貫フルーツほおずき」という食用ほおずきの生産者団体の支援の仕事をしていた。
任期は2019年7月末までであるが、その後もその「花貫フルーツほおずき」の仕事も継続しながら、自身の新しい活動のため「あるふぁぶっく」を立ち上げたのである。
運送業とは、運営者(キタモトツヨシ)が、開業資金なるものを一切持ち合わせていないことからやっている仕事であるが、それもまた、地域の実情を知ることに役立つ仕事である。
「あるふぁぶっく」という店舗名(屋号)に込められた意味は何か?
いくつかの由来があるのだが、それを延々と書き連ねてみることにする。
1)「あるふぁぶっく」≒「意味なし説」
古書店をはじめるにあたり、ウェブサイトをこしらえなければならないと漠然と考えていた頃、1日で終わるwordpressの講座を受講したことがあった。
そこで、実際にひとつwordpressのサイトを立ち上げてみることになった。
ドメインも取得し、サーバーも契約ということだった。
「おお、これは、サイトを作ろうとしていたので、ちょうどよい」と思ったところ、ドメインを取る段になって、気がついた。
「まだ店名(屋号)を考えていなかった…」
ドメインは決して屋号と関係ない文字列でも差し支えないが、できれば、屋号に関係した文字列+.comというのが一般的だ。
そこで、約5秒くらい考えて思いついたのが「あるふぁぶっく(す)」なのだった。
2)「あるふぁぶっく」≠「アルファヴィル」
とはいいつつ、何もなく、「あるふぁぶっく(す)」店名が産まれたのではない。
もともとは、「アルファヴィル」にしようとしていたのだ。
「アルファヴィル」とは、フランスの映画監督ジャン=リュック・ゴダールの映画のタイトルである。
その内容は、検索に委ねるとして、なぜ「アルファヴィル」にしたかったかといえば、それが架空の都市名だからである。
または、主役レミーコーションに私自身あこがれがあったからだろう。
この映画は低予算のSF映画だが、ゴダールの映画の中では一番わかりやすいPOPな映画なのではないだろうか?
コンピューターに支配された近未来を特殊効果一切なしで表現したこの映画は、60年代のパリ近郊のモノクロ画面が今となってはより未来的に見える。
3)「あるふぁぶっく」≠「アルファレコード」
YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)は、70年代末から80年代中頃まで活躍した、テクノバンドである。
45歳以上の方であれば、言わずと知れたバンドであるだろうが、今の若い人には、どのようなイメージがあるのだろう…。
そのYMOが所属していたレコード会社が、アルファレコードである。
今年(2018年)はYMOが結成40周年らしく、リマスターのCDも発売された。
私がYMOを聞きはじめたのは中学生であったが、当時はまず、「歌がない音楽」に衝撃を受けたのを覚えている。
TVでは、「ザ・ベストテン」などの音楽番組が盛んな時期で、松田聖子などの歌謡曲が時代を席巻していたわけであるが、その中にあって、「歌なし」の音楽で世界を席巻していたYMOが、私だけでなく多くの(一部の)若者を虜にした。
つまり、私がここにある原点を考えるときYMOがひとつの起点になったことは間違いない。
前述のゴダールの映画を観るきっかけになったのもYMOの楽曲に「東風」や「中国女」があったからである。(その「東風」、「中国女」の題名の由来も坂本龍一が特に意味もなく引用したと言われている)
アルファレコードは、YMOだけのレコード会社ではないが、当時の私にはひとつの大きなブランドであった。
今の「アップル」に近い。
というわけで、「アルファレコード」は「あるふぁぶっく(す)」の「あるふぁ」の由来のひとつであることには、間違いない。
4)「あるふぁぶっく」≠「アルファブックス(水戸市)」
当初はカタカナ表記で「アルファブックス」にしようと思ったのだが、検索すると過去に水戸市で「アルファブックス」があったようである。
現地で確認し、現在は閉店している様子だが、書店組合のサイトには情報が掲載されており、実際にはどうなっているのか確認できていない。
電話も呼び出しはされるものの繋がらない。
とはいえ、別の店名に変えるのも面倒であったので、ひらがな表記で末尾の「す」を取り、「あるふぁぶっく」とした。
運営者(キタモトツヨシ)も水戸市内で、移動販売形式での出店を計画しており、何らかのつてを頼って連絡を試み、一言ご挨拶したいと考えているところである。
5)「あるふぁぶっく」≒本屋+α
運営者が目指しているのは書店ではない。
しかし、事業としては本屋(古書店)として、成立させたい。
何を目指しているかといえば、単なる場所作りである。
私の10代の心の拠り所といえば、駅前の本屋であったということは、前述のとおりである。
規模も小さく、場所も駅前ではないものの、ある一部の人々の「心の拠り所」となるような場所=α(アルファ)として、考えている。
サードプレイスという言葉があるが、かつての駅前書店はその機能を果たしていたように思う。
そして、現在に至っては、特に地方ではその機能を果たしている場所は数少ないように見受けられる。(これは、移住してはじめて気づいた点である)
「あるふぁぶっく」は規模こそ小さいが、僅かにその役割を果たしたい。
6)「あるふぁぶっく」≠「ザウバーアルファロメオF1チーム」
「あるふぁぶっく」のサイトやTwitterなどで使用する店舗ロゴを考える必要があった。
基本的に「あ」から始まる店名であることや新しく始めることなどあるわけで、シンプルに「あ」をデザイン化したものを自分で作ることにした。
結果このサイトの最上部にあるものを現在使用しているが、これのネタ元はモータースポーツF1の「ザウバー・アルファロメオ」のチームロゴのアイデアを少し真似たものだ。
「S」が丸からはみ出したものだが、シンプルでよいと思う。
最も、私自身F1はかつて10年前までは真剣に見ていたが、現在では結果のみ追うくらいである。
ザウバーは、F1チームの中では中堅または下位チームだが、フェラーリの支援を受けている関係で同じフィアットグループの「アルファロメオ」がパワーユニット名称として付けられている。
デザインのみ引用したが、残念ながら「ザウバーアルファロメオチーム」のファンではない。
7)「あるふぁぶっく」≠「alfa」「alpha」
英語表記については「alfabook」としたい。
しかしながら、「アルファ」というのは、「alfa」と「alpha」の表記があるが、どちらが正しいのか釈然としない。
おそらくは、どちらでもいいのかとも思う。
前述の「アルファレコード」はalfarecordであり、アルファロメオはalfaromeoである。
s onyのデジタルカメラ、αシリーズは英語サイトでは、「alpha」と記載されている。
もっとも、αという記号でもいいわけだが、運営者自身数学は苦手であることからやめにした。
8)「あるふぁぶっく」≠「Alphabet」
Googleの持ち株会社が「Alphabet」というそうだ。
その命名の由来は知らないが、勝手に想像すれば、「物事を一から考える」とか、「原点回帰」とか、その類の思想が垣間見える。
私がAlphabetという単語で連想するのは、天才「Prince」の曲「Alphabetstreet」である。
80年代のプリンスは、今でも通用するハイレベルな楽曲を作っているが、中でもこの曲は彼の楽曲のうちで私の中で一番好きな曲である。
9)「あるふぁぶっく」≠「デザインあ」
ロゴについていえば、懸念されたのが、「あ」の一文字のロゴが、「デザインあ」のロゴとイメージがダブってしまう点であった。
今後については、変更の可能性もあるが、基本的には白背景のロゴは黒とした。
結局、極めてシンプルにしたいため、どうしても同じようになってしまい、現在に至る。
この夏、お台場の日本科学未来館にて、「デザインあ展」が開催されていた。
いそいそとここ茨城から向かったわけだが、平日に行ったものの夏休みで子供でごった返しており、2時間以上待つということだったので、挫折して帰ってしまった。
コーネリアスこと小山田圭吾氏と運営者は同い年、音楽の趣味も一部は同じようなもので、思考が近いものになっても仕方ない。
まあ、小山田氏と私と比較しても、先方は気にもならないほどの小さな事業をはじめようとしているわけで、「デザインあ」と似ている問題は、オマージュを捧げていると解釈してもらえれば、幸いと考えている。
10)「あるふぁぶっく」≠「あるふぁぶっくす」
当初、「アルファブックス」にしようとしたのだが、同名の店舗が存在したので、カタカナ表記に変更したのは既に書いた。
では、「あるふぁぶっくす」という複数形ではなく、「あるふぁぶっく」としたのは、なぜか?
ひとつは、読み方は同じなので、僅かながら一文字減らすことで同じ店であるという誤解を避けるねらいがある。
もうひとつは、本の在庫量のことだ。
書店の店名で○○ブックスというのを見かけるが、それは本がたくさんあるという意味合いを出したいためだろう。
しかし、今から私がはじめる本屋は、それほど多くの在庫量がないはずだ。
ならば、複数形にする必要もないということで、「あるふぁぶっく」となったのだ。
本屋というのは、在庫量が多いことに越したことはない。
しかし、小さくてもより良い本を提供できれば、これ以上の喜びはない。
以上が、「あるふぁぶっく」の名前に関する話だ。
名前の話であって、コンセプトとは違う。
コンセプトの話については、次の記事に書くことにしよう。
【参考文献】
荒川洋治著「過去を持つ人」みすず書房

2018年11月19日